児童手当は月額10万円が妥当?


貧しい人に生活保護は与えるのは、マジメな人ほど損をするので許せないということが言われています。コストを支払わずに一方的に恩恵のみを受けるフリーライダーは許せないというわけです。この前提に立ってみると、児童手当は一人につき月額10万円くらい払わなければならなくなるのではないか、と考えてみます。

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子どもにかかるコストは、約3000万円

前回もお話しましたが、子どもにかかる養育費および教育費を含めると「子どもの誕生から大学卒業まで、2,655~4,105万円かかる」ということが言われています。

子どもをひとつの商品として考えてください。子どもをうむメリットは何でしょうか。幸せになれるとか、愛情を感じられるというものくらいしかないでしょう。しかしこれだけのお金があったら、はっきり言って別荘の一件でも買ったほうが幸せになれるでしょうし、このお金を使って、夫婦や恋人と愛情を感じたほうがよっぽど合理的にも思えます。

子どもを生まない選択をすることで、経済的には3000万円近いメリットを得ることができるのです。さらに子どもを育てるための人件費も考慮するのなら、例えば1日4時間時給800円で22年間働くと、2,000万近くが別途発生します。そうすると数千万近い損失を被ることになります。

いずれにしても単純にお金だけを計算すると、子どもを持つことは損失であり負債以外の何ものでもありません。

子ども一人で、市場は2億円の利益を得る

それに対して、一人の子どもが生まれると、市場はどれだけの利益を得るでしょうか。人一人が生涯で消費する額は、2億円と言われています*1。100人生まれると200億円で、100万人生まれると、200兆円のマーケットが生まれます。

あまりにも膨大な数字なので、例えばもっとミクロに考えてみましょう。人一人が生涯漫画に支払う額はどれくらいでしょうか。かなり個人差がありますが、漫画がそれほど趣味でない私でさえ、10万円くらいは払っていても不思議ではありません。あるいは大手運送会社一社に支払う運送料を考えてください。やっぱり10万くらい払っても不思議ではありません。それに対して、小さな町で営んでいる個人経営のバーなどはそれほど人口増加でもそれほど大きなメリットを得ないかもしれません。誰もが知っているような大企業ほど、ひとりの子どもがうまれることで莫大なメリットを受けることになります。

このような前提でものを考えると、マジメに働いて子どもを育てる家庭は数千万近い損失を被るのに、企業は2億円近いメリットを得ます。フリーライダーが許せない人は、(大)企業にもう少し負担をお願いしたほうが良いかもしれません。法人税の実効税率は、15%ほどで10兆円の税収と言われています。しかも大企業ほど課税されなくなる傾向にあるようです。ですので、何%がいいとは一概にはいえませんが、まだまだ法人税をあげる余地はありそうです。

児童手当10万円の根拠

子ども手当は、月額10万円が妥当だというのは、養育費が2,600万円だったとしてそれを22年間支払うと、月額9.8万円になるからです。1歳あたり100万人いると考えると、22歳までの人は2,200万人くらいいることになりますから、合計で毎年22兆円くらいが追加で必要になります。

もちろんこの額が無茶苦茶であることはわかっています。本当に月額10万円払えるとは思ってないです。とは言え、いろいろと工夫する余地はあるかもしれません。たとえば直接給付ではなく、教育を大学まですべて無償化したほうが安く済むというのであれば、それでも構いません。あるいは塾に通わずとも大学に通えるように現状の教育システムを変えるということもコストカットには重要でしょう。

教育が無料であれば、食費や医療費など子どもの生活費は、1,600万円ほどですから、月額6万円くらいで済みます。

おわりに

以上の理由から、フリーライダーが許せないという人は、子どもを持つ家庭への支援をもう少し考えたほうがいいといえます。明らかに現状では、子どもを産まないほうがはるかに経済的に合理的であることは間違いありません。経済的な観点からすると、いまや子どもを持つことは利己主義ではなく利他主義です。もちろんこのような利他主義者を社会的に賞賛することは大切ですが、善い人ほど損をするという状況は変わりありません。マジメに頑張っている人ほど、損をする一方です。

少子化対策の議論は、しばしば出生率を増やすのに効果のある政策は何かという関心から出発しています。しかし私は、社会的な公正さという視点からもこの問題を考えるべきだと思います。

たんに人口問題だけを議論していると、移民を受け容れてしまえば、児童手当も保育園の増設も、学費の無償化も不要であるという主張が出てきかねません。しかし、社会的公正という観点からすると、移民がいてもいなくても、子どもに対する経済的支援は必要になります。


*1: 橋本択摩, 2006年11月27日, 「テーマ:ライフステージ別にみた家計の赤字転落リスク 」(2016年8月12日取得).

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